シャーマンの仕事 [シャーマニズムの概要]

伝統的なシャーマンは、祭司、神秘家、霊媒、呪術者、呪医、占い師など、多くの顔を持ちます。

ですが、一言で言えば、シャーマンは霊魂の専門家と言うことができます。
シャーマンは、地上、地下、天上の3つの世界を移動し、精霊や霊魂と交流し、それらを操作します。

重要なのは、シャーマンは個人的な求道を行なう神秘家ではなくて、部族のために尽くす存在だということです。
シャーマンは様々な精霊や魂をコントロールすることで、部族のメンバーを含めて、部族全体の健康や安全、調和、豊穣を守る存在です。

S17.JPG
*北米ブラックフット族の呪医(シャーマンの世界)

シャーマンの仕事は、抽象的に表現すれば、天上や地下と地上との間に、言葉と魂を運ぶことだと言えます。
つまり、あの世とこの世、神霊の世界と共同体の間の、魂(生命)の循環と、メッセージ(意志)の伝達・コミュニケーションを正しく行わせることです。
具体的には、以下のようなものです。

1 不猟・不漁・不作や天候の不良などの問題の解決
2 部族のメンバーの精神的、身体的な病、怪我の治療(ヒーリング)
3 人間の死と誕生を助ける
4 霊的世界とのコミュニケーションを担う
5 呪術的な攻撃から共同体のメンバーを守る


1は、神や「動物の主」がいる天上や地下世界に行って、供犠の動・植物の魂を届け、豊穣を懇願したり、不猟の理由を聞き出したりして解決します。
より積極的な行為として、「動物の主」と戦ったり、動・植物の魂を盗んできたりすることもあります。


2は、その理由によって解決法も様々です。

「邪霊」の侵入が原因の一時的な疾患の場合は、これを霊視して、「補助霊」の助けを得ながら、吸い出して、追い祓います。

患者の「守護霊」が離れたことが原因の長期的な疾患や、生命力の低下などの疾患の場合は、天上や地下などの他界に行って探し出し、「守護霊」を連れ戻して患者の体に入れ直します。

患者の魂が彷徨い出て、意識を失うような死の危険もある重度の疾患の場合は、地下世界に行って魂自体を連れ戻します。
悪霊が魂を盗んだ場合はこれと戦います。


3は、まず、死んだ人間の魂に対しては、死んだこと、生者と別れないといけないことを理解させます。
そして、魂が行くべき死者の世界へと道案内します。

赤ん坊が欲しい時には、地下世界の女神や祖神などのところに行って頼んだり、魂を盗んできて女性の胎内に入れたりします。
難産の場合は、うまく出産できるように助けます。


4は、まず、飛翔や憑依によって、あるいは、占いによって、神々や祖霊から神託をもらうことです。
逆に、飛翔して神々などに頼みごとを伝えたり、何らかの知識を得たりすることもあります。
また、供犠とされる動物の魂を天の神に届けます。


5は、敵対する部族の呪術師や黒魔術師からの攻撃を見破って防ぎ、逆に、相手の呪術師や部族のメンバーを攻撃することです。
あるいは、精霊からの攻撃を防ぐこともあります。
これらの場合は、病気治療の場合と同じく、その時々に適した「補助霊」を使います。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。