シャーマニズムの宇宙論 [シャーマニズムの概要]

アルタイ、シベリアのシャーマニズムを中心に、シャーマニズムの典型的な宇宙論を紹介します。
シャーマニズムの宇宙論は、北欧神話やインド・ペルシャ神話、南中国の神話、中南米の神話などにもはっきりと現れていて、普遍性の高いものです。

ただ、シャーマニズムは、シャーマン個々人の内的な体験をもとにしているので、それぞれのシャーマンが自分の宇宙論と神話を持っているとも言えます。


<三世界>

まず、世界は「天上」、「地上(中間世界)」、「地下(冥界)」の3つの世界からなります。
これは、シャーマニズムの世界観として、かなり普遍的です。

世界の中央には大きな樹(世界樹、宇宙樹)があって、3つの世界をつなげています。
あるいは、大きな山(世界山)があって、その上に「世界樹」が生えていたり、天の中心である北極星にいたる「柱(世界柱)」や「梯子」があったりします。

「世界樹」は、例えば、北欧神話のユグドラシルが有名です。
「世界山」は、インドのメール山(須弥山)や中国の崑崙山が有名です。
「梯子」は、ムハンマドが天国を訪れる時に昇った話が有名です。


「世界樹」は「生命の樹」であったり、「世界樹」の近くに「生命の樹」が生えていたりします。
「世界樹」の頂きには鷲などの鳥がとまり、枝には人間として生まれる予定の魂が宿っていることもありまます。

「世界樹」の下には牛や鹿、そして、蛇などが住んでいて、天の鷲に対して、地上と地下を代表します。
「世界樹」のもとには「生命の泉」があって、そこから「生命の水」が湧き、川が四方に流れ出しています。
「世界山」に住む「世界鳥」としては、ペルシャ神話のシームルグが有名ですし、三足烏も崑崙山に住む聖鳥です。
旧約聖書でイブを誘惑した蛇は、本来、「生命の樹(世界樹)」に住む蛇だったのでしょう。

4つの川は、例えば、旧約聖書のエデンの園からも流れています。
中国の四川省の四川は、崑崙山から流れる4つの川から来ています。

古事記などの日本神話では、「天の御柱」は「世界柱」、「天の香具山」は「世界山」、「天の真名井」はその下にある「生命の泉」だったのでしょう。

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*シベリアのシャーマの衣装(シャーマンの世界)

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*ラップ人の太鼓(シャーマニズムの世界)

<天上世界>

「天上世界」には、「指導霊(ティーチング・スピリット)」や「守護霊(ガーディアン・スピリット)」、英雄などがいて、彼らから助言などを受ける場所です。

天上には、「世界樹」や「世界山」、「世界柱」や梯子を使って昇ります。
北極星のところには穴があって、そこを通って、一番下の天上に昇ります。 あるいは、飛翔して天上に至ることもあります。

天は複数の層(7層とか9層というのが多いようです)から構成されていることもあります。
ひょっとしたら、これは、バビロニアの宇宙論の影響を受けたのかもしれません。

星は、天上の光が漏れてくる天球の穴と考えられることが多いようです。
日本語で星を「筒」と表現するのは、幅のある穴を表現したものでしょう。

天上の神々のパンテオンははっきりと決まっていませんが、いくつか主要なものを紹介しましょう。

アルタイ、シベリアの場合、最高天には白い至高の創造神の「テングリ(天神)」や、あるいは「バイ・ユルゲン(大いなる者)」がいます。
彼らは太陽と結びつきが強く、鷲などの鳥をメッセンジャー、見張りとしています。

また、下方の天には、「7人の息子達」、「9人の娘達」と呼ばれる神々などがいます。
この神々は、プレアデス(すばる)、あるいは、北極星の周りの沈まない星座(子熊座や北斗七星)が関係しているかもしれません。

一番下の天には、「生命の湖」があって、人間の出産を司る「北極星の女神」がいることもあります。


<地下世界>

「地下世界」には、「パワー・アニマル」や「援助霊(スピリット・ヘルパー)」などがいて、挑戦と力の場所です。
地下にもいくつかの層があると考えることもあります。

「地下世界」には、「世界樹」の根もとや洞窟や泉や穴から降りていきます。

地下には、死者のいる「冥界」があります。
「冥界」へは、地下世界で川を渡ったりして、困難な道を行かねばなりません。

「冥界」には冥界王がいます。
各氏族の祖霊、祖神もいますが、祖神は天にいると考えることもあります。
「冥界」では、すべてが逆だと考えることもあります。
つまり、「地上世界」とは季節、昼夜、左右、上下が逆なのです。


<地上世界の異界>

「地上世界」には、様々な異界に行くための拠点となる場所があることもあります。
「天上世界」や「地下世界」の霊を、ここに招くこともあります。
シャーマンが「夢見」を行う場合は、まずここを訪れます。

「地上世界」にも異界があります。
そこは、ボートに乗って行く「島」である場合もあります。
そこには、先輩シャーマンがいることもあります(先輩シャーマンは天上にいる場合もあります)。


また、地上の日常世界と重なって、その背後には魂が本来の姿を現す「魂の世界」があると考えることもできます。

地上にいる植物や鉱物などは、「魂の世界」では、本当の姿を現します。
人間の姿をしている場合もあれば、異なる生き物の姿をしていることもあります。
「援助霊(スピリットヘルパー)」とは、この世界で会話します。

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