イラン/インドのシャーマン神話とコスモロジー [シャーマニズム的な神話とコスモロジー]

インド・ヨーロッパ語族に属するペルシャ/インド神話のコスモロジーは、アルタイ・シベリアのシャーマニズムのコスモロジーと似ていて、影響関係があったと推測できます。


<イラン>

イラン神話の宇宙像は、典型的なシャーマニズムの宇宙像です。

世界の中心には世界山の「アルブルズ」があって、山頂からは天に橋がかかっています。

また、その近くには2本の聖樹があります。
「白ハオマ樹」という生命の樹と、「百種樹」というすべての樹木のもとになった大母樹です。
この樹には「サエーナ鳥」が巣食っていて、この鳥が羽ばたくと種がばらまかれます。
この樹を悪魔のトカゲが狙っていますが、10匹の魚が守っています。

また、半人半牛の「ゴーベッド・シャー」が守る天の牡牛「スリソーク」がいます。
この牛が終末の日に供犠として捧げられると、人間が不死となります。
つまり、この牛は「生命の牛」なのです。


英雄王の「イマ」は、一種の「文化英雄」、「祖神」であるため、シャーマンに似た要素がわずかに見られます。
彼は、恐ろしい冬が3度襲ってくると創造主に警告された時に、巨大な洞窟を作ってあらゆる生き物の種をここに入れて守りました。

また、イランの天空の光神「ミスラ」の神話をもとにして、後のヘレニズム時代のトルコで作られた「ミトラス神」の神話には、さらに多くのシャーマンの要素を見ることができます。

悪神によって寒い冬が訪れて生物が死滅し、聖牛も連れ去られました。
この時、冬至に、ミトラスは稲妻として洞窟に降り、岩から生まれ出ました。

彼は地上を照らすように太陽神に話をします。
そして、聖牛を見つけて洞窟に運び、供犠として殺すことによって、世界を浄化して豊饒な存在に戻し、魂が循環する道を作り直しました。

その後、地下世界に行き悪神を改心させました。
この間に地上では旱魃が起ったので、岩を射て泉をわき出させました。

最後に彼は戦車で天に昇りました。
このように、天上や地下の神と交流して、天候など世界をあるべき姿にし、牛を連れ戻して洞窟で祭儀を行い、魂の循環を正しくする、これらの点は、「文化英雄」の特徴でもあり、シャーマンの特徴でもあります。


<インド>

インド神話にも、イラン同様に、典型的なシャーマニズムのコスモロジーがあり、シャーマン的な神話もあります。

ここでは、ヒンドゥー教の聖典「プラーナ」の宇宙論を扱います。
これらは紀元前後の歴史時代に入って書かれたものなので、新しい要素もありますが、古くからのシャーマニズム的世界観の要素を抜き出して紹介します。

「プラーナ」の宇宙論は小乗仏教(部派仏教)の「倶舎論」の宇宙論とも似ています。
世界の中心には世界山の「メール山(須弥山)」があります。
メール山の山頂には「ブラフマー神」の城があって、ガンジス川が城を一回りしてから四方の大河に分かれて流れます。

また、その回りに4つの山と樹があります。
その中の「ジャンプ樹」の果汁が川となり生命の水を供給します。
また、4つの湖があって神々の飲み水を提供しています。

天上は何層にも渡る世界があります。
地下には7層の世界があります。
龍神などが住む楽園もありますが、地獄もあって、そこは冥界王の「ヤマ」が司っています。


「ヤマ」はイラン神話の「イマ」に相当する人物で、仏教では「閻魔」になります。
ヒンドゥー教以前の神話では、ヤマは「最初の人間」でした。

ヤマにもシャーマン的な要素が少し見られます。
彼は死後の天国へ行く道を発見して死者を導きました。
そして、死を乗り越えて天の祖先の国の王となりました。

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