マヤ/トルテカのシャーマン的神話とコスモロジー [シャーマニズム的な神話とコスモロジー]

南北アメリカのネイティブな文化は、主に北アジアからやってきたモンゴロイドのシャーマニズム的文化をもとに発展しました。
中でも高度な古代文化を築いたのはメソアメリカと呼ばれるメキシコと中央アメリカのマヤ地方です。

マヤ/トルテカに代表されるメソアメリカの文明は、この地方の多くの都市の数千年に渡る交流の中で発展しましたが、南アメリカのインカのように統一的な帝国は生み出しませんでした。
主要な都市国家は、メキシコ湾岸のオルメカに始まり、メキシコ高原のテオティワカン、そして、ティカル、パレンケ、チチェン・イツァ、コパンといったマヤの諸都市、メキシコ高原のトルテカ、アステカと流れました。


マヤ/トルテカの宇宙像で、大地をささえるワニの体の中心から生命の樹でもある世界樹が生えています。
この世界樹は十字の形をしています。
世界樹は天球では天の河でもありました。

パンヤの木が世界樹、ピラミッドは人工的に作られた世界山で、天と冥界に通じていました。
天上世界は13層、地下世界は9層からなります。

体の中には、一種の生命の樹があります。
これをつたって体の中を昇降する霊的エネルギーは、「天の雫(体の稲妻)」と呼ばれます。
そして、体に3つの霊的センター(頭頂、心臓、肝臓)があると考えました。 インドや中国で発展した霊的生理学に近いものが、マヤ/トルテカにもあったのです。

マヤ/トルテカをはじめ、南北アメリカでは、主な、穀物は「トウモロコシ」、狩られる動物は「バッファーロー」、狩る動物であり夜の太陽、地下の象徴は「ジャガー」でした。
そして、時間と関係した原初の存在は「蛇」、太陽の鳥は「鷲」、解放をもたらす鳥は「ケツァル鳥」でした。
王は、シャーマン的な司祭であって神の化身でした。 また、司祭達は、精神的な成長によって第2の心臓と顔を作ることによって、太陽を養うことを目標とします。
第2の心臓は浄化された魂、第2の顔は浄化された人格を象徴するのでしょう。

マヤ/トルテカの世界観の中には、この不死への道が数多く象徴的に示されています。

その一つはマヤ/トルテカのコスモロジーの核心に位置する神聖暦「ツォルキン」の中にもあります。
この暦の1年は20×13=260日からなりますが、20の象徴体系は、人間が生まれてから不死性を獲得するまでの精神の遍歴を象徴します。

トルテカの神話における中心的存在は「ケツァルコアトル」です。

Quetzalcoatl_telleriano2.jpg

ケツァルコアトルは半神半獣半人の存在で、風鳥であり、水蛇(天と地の象徴)であり、金星神であり、生命の樹であり。そして、王=神官の理想の姿であり、その世襲名なのです。
緑青の翡翠とケツァル鳥が彼の象徴です。

ケツァルコアトルは、月の女神と太陽の息子として生まれ、人身御供を行わない優しい王=神官になりました。

ケツァルコアトルは、自然の気紛れな力を象徴するトリックスター的な神「テスカトリポカ」から様々な試練を受けました。
また、彼は、人間の魂を転化して作られたトウモロコシを盗みました。
そして、冥界に下って、地下の動物達に助けられて、父を遺骨から復活させ、鷲に乗って天に帰りました。

ですが、ケツァルコアトルは、悪者に酒を飲まされ、妹と近親相姦をしてしまい、自分を火葬し天に昇ります。
そして、心臓が金星(明けの明星)になります。
金星である彼は地下に下り、石棺に入って8日後に復活しました。
そして、いつか帰ってくると言い残して、蛇の筏に乗って異界へ去りました。
トウモロコシを盗む、動物の手助け、冥界下り、鷲との飛翔などは、シャーマン的な要素です。
ですが、彼が父を復活させたり、自身が復活したりして示した不死性は、単なるシャーマンではなく特別な英雄神の特徴です。

トルテカの宗教の実態は不明ですが、不死性を獲得したシャーマン的な英雄神を神官の目標とする、シャーマニズムの発展した思想を持っていたと推測できます。


また、マヤの有名な神話「ポポル・ヴフ」も、死と再生の試練を経て、不死性を獲得した双児の英雄神の物語です。

ケツァルコアトルや「ポポル・ヴフ」の神話には、天体や穀物の復活と重ねて、人間の精神の霊的成長が象徴的に語られているようです。

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