イニシエーションの飛翔 [イニシエーション]

シャーマンになるためのイニシエーション(通過儀礼)は、数日から長期に渡ることが一般的です。

本質的なイニシエーションは、トランスや夢などのヴィジョンの中、霊的な世界で行われます。
その時に、天上世界への「上昇(飛翔)」、地下世界への「下降」、身体の「解体と再生」の3つが必須の体験です。

天上世界と地下世界への旅は、それぞれの世界を知り、そこにいる霊的存在を知り、知己を得ることが目的です。
シャーマンになることを決めた「精霊」や「先代シャーマン」が「守護霊」に引き合わせてくれたり、彼らのいずれかが霊的な世界を案内し、シャーマンにとって必要な術を教えてくれます。


必ずしも順番は決まっていませんが、まず地下世界へとトリップします。

シャーマン候補者は、地下世界へ通じる穴から地下世界に降ります。
その前後で、険しい山を越えたり、森を抜け、蛇や怪物などの障害を克服して進みます。

地下世界では、川に架かった細い橋を渡って進みます。
橋の上には魂を食う怪物がいたり、橋の下には先に死んだシャーマンの骨が落ちていたりします。

あるいは、苦悶する死者で満たされた川や海を舟で渡ったりします。

そして、地下世界の「精霊(怪物)」のもとで、体を解体され、再度組み立てられ、新たにシャーマンの能力を持った存在として再生する体験をします。
これによって彼は、病気の治療の能力、知識を得ます。

*この解体・再生のヴィジョンについては、次のページを参照ください。

また、シャーマンは、「死者の国」の場所や行き方、「死者の国の王」などを知ります。

そして、シャーマンは、鳥(パワー・アニマル、補助霊の鳥)に乗るなどして地上へ帰ってきます。


次に、シャーマンは天上世界に昇ります。
ですが、高い層の天上世界ほど、簡単には行けません。

S19.JPG
*エスキモーのシャーマンが守護霊達と共に飛翔する絵(シャーマン)

シャーマンは、例えば、「世界樹(世界柱)」を昇って、北極星のすぐ横にある天の穴からその上の天上世界に上がります。

そして、彼は天上の様々な霊的存在と交流して、太陽や月にも行きます。
太陽は多くの場合、「守護霊」的な存在であるか、その天の至高神です。

そして、シャーマンは太陽の使いである鷲に乗ったり、自分自身が鷲に変身したりして、飛翔します。
ですが、飛翔は帰り道を見失うことにつながるので注意が必要です。


このように、シャーマンはトリップによって、宇宙の構造や、天上の神々、死者の世界、動物の主の居所などを把握します。
そして、それらの霊的存在達とコミュニケーションを取って関係を構築します。
そのための飛翔は、シャーマンとしての仕事を行うための必須の体験です。


このシャーマンのイニシエーションにおける飛翔に似た体験は、後世の秘儀宗教や、ユダヤのメルカーバー神秘主義、ゾロアスターやムハンマドの天界の旅などにも見ることができます。

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