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解体死とシャーマンとしての再生 [イニシエーション]

シャーマンはイニシエーションの時に、「精霊(怪物)」や「祖霊(先輩シャーマン)」などによって、体のすべての部分を分離、解体された後で、再度、組だ立てられ、再生されることを体験します。

骨、肉、血はバラバラにされ、頭も取り外されます。
そして、体は大鍋に放り込まれて煮られたりします。

この体験は、地下世界で行われることが多く、地下世界への下降(飛翔)トリップの時に行われることもあります。

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*ヤクート族シャーマンのイニシエーション時の解体体験(シャーマンの世界)

この「精霊」的存在は、怪物のような恐ろしい存在であると同時に、知識を授けてくれる教師的存在でもあります。 彼らによって、体の各部位を表す呪術的な言葉を教えられ(言わされ)、様々な病気の原因と治療に関する知識を得ます。
呪術的な言葉は、体の各部位を操作する力を持ちます。

目をくり抜かれて新しい目を入れられたり、水晶を体の中に組み込まれたりして、それによって患者の体を透視したり、精霊を見たりする霊視力を得ることもあります。
それから、耳に指を突っ込まれて、草木や動物、精霊の言葉を聴けるようになることもあります。

シャーマンには普通の人にはない骨や筋肉があって、それを教えられることもあります。
体の各部には、それぞれの働きを象徴する「精霊」的存在がいて、自然界にもそれぞれに対応する場所があると教えられる場合もあります。

その後、新しく体が組み立てられて、シャーマンとなって再生するのです。
このようにして、彼は病気を治療することができるようになって、シャーマンとして復活するのです。
死と再生は、一般の成人儀礼にも共通するテーマです。
新しく成人になる人間は、怪物に呑込まれ、噛み砕かれることで、子供として死に、大人として生まれます。

ですが、シャーマンのイニシエーションにおける解体死と再生の体験は、これらよりはるかに深い意味のある体験です。

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*ペル―のシャーマンののイニシエーション時の解体体験(シャーマンの世界)

シャーマンは「動物の主」への供犠として自分の身体を捧げることもありますが、このことや、シャーマンの解体のヴィジョンは、チベット密教の「チュー」の修行へも受け継がれています。

ちなみに、現代の、宇宙人にさらわれて、人体実験されるという現代の神話的体験も、このシャーマンの解体のイニシエーションが原型となっているのでしょうが、本質は失われています。

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内部閃光と唸り声 [イニシエーション]

シャーマンがトランス状態に入る時、あるいは、入った時に、典型的に現れる言葉やイメージ以前の生理的な「幻視」と「幻聴」があります。
これらは、「魂の世界への入口」、「変身への入口」だとも考えられています。
幻覚植物を摂取した場合にもこれらが現れます。

幻視は、「内部閃光」などと称される、幾何学的な図形などです。
世界中の石器時代の洞窟壁画やペトログリフには、そのような図形が多数、描かれています。

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*トゥカノ族の描いた内部閃光のパタン(神の発明)

ですが、普遍的な生理的な「内部閃光」のパタンと、各地それぞれで見られる絵記号、彫刻記号は必ずしも一致しません。

ハインリヒ・クルーヴァーは、「内部閃光」の基本パタンを「格子」、「クモの巣」、「トンネル」、「螺旋」の4つとしました。
また、デヴィッド・ルイス=ウィリアムズ&ドウソンは、「内部閃光」と洞窟壁画、ペトログラフを研究して、共通する基本パタンを「格子」、「平行線」、「ドット」、「ジグザグ」、「巣状曲線」、「細かい網の目」の6つとしました。

「内部閃光」は普遍的だとしても、それをシャーマンが認識して象徴的な記号として解釈すると、部族的な違いが生まれます。

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*デヴィッド・ルイス=ウィリアムズ&ドウソンによる6パタン(洞窟へ)

ウィリアムズ&ドウソンが言う「巣状曲線」は、「光の弧」とも表現されます。
洞窟壁画には、「光の弧」の向こう側に半獣半人の精霊(あるいは変身したシャーマン)を描く図や、「光の弧」から動物が出て来るような絵があります。

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*アフリカのサンの絵(洞窟の中の心)

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*同上


一方、幻聴は、「ブーン」という蜂の飛ぶ音や、低い唸り声のような音です。
これらは、精霊の呼び声などと考えられることもあります。

部族の成人式のイニシエーションなどでは「うなり板(木)」という、ひもを付けて振り回すとブーンという音がする楽器が使われますが、これはこの幻聴を再現した音でしょう。

サン族は、「巣状曲線」の幻視とこの幻聴を合わせて、「蜂の巣」と考えます。


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シャーマンの秘密言語 [イニシエーション]


ツングース、ラップ、ヤクートなどでは、シャーマンの「秘密言語」があって、シャーマンは、イニシエーションでその習得が必須のものとなっています。

シャーマンは、儀式などで、精霊との会話で使います。
トランスになって、精霊を呼び出す「パワー・ソング」で使われることもあります。

シャーマンは、「秘密言語」を先輩シャーマン、もしくは、精霊から直接、教えられます。

「秘密言語」は、動物の言語、特に鳥の言語であったり、それに由来するものであったりすることが多いようです。
イニシエーションの時、動物の声真似を習得する場合もあります。

ヘビなどの呪術的な動物を食べることで、鳥の言語を習得することができるとする場合もあります。

「秘密言語」が鳥の言語とつながりが深いことは、「秘密言語」が音楽とつながりが深いということでしょう。

また、ツングースでは、シャーマンはトランスの間、どんな言語でも理解できると信じられています。


中世ドイツの女性神秘家である、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンは、ヴィジョンの中で、人間の言葉とは違う天上の言葉を聞きました。
そして、彼女は、多くの聖歌を佐曲しましたが、その楽譜には、解読不可能な「知られざる言葉」も使われています。
彼女が聞き、使った言葉は、シャーマンの秘密言語と似たものでしょう。

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シャーマンの衣装 [イニシエーション]


アルタイやシベリアのシャーマンは、一人一人、儀式の時に使う特別な衣装を持っています。
衣装には、上下の服、マント、胸あて、帽子、頭巾、靴、装飾品などなどがあります。
そして、様々な飾り(金属製品や革製品)が付けられ、刺繍やペイントの絵が描かれています。

これらの衣装は、コスモロジーやシャーマンの身体の聖性を反映した、一種の身体曼荼羅のような存在です。
そして、ここには諸霊が招かれます。

以下、アルタイ、ツングースのシャーマンの一般的な衣装の特徴について、記します。

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*衣装を着たシベリアのシャーマンの絵


アルタイ地方のシャーマンの衣装は、全体として鳥を表現しています。
肩から垂れている総は翼、背中に垂れている長い帯条は鳥の尾を表しています。

これは、シャーマンが「パワー・アニマル」の鳥に変身したり、その力を借りたりして飛翔することを表現し、また、それを保証するものでしょう。


ツングースのシャーマンの衣装には、シャーマンの骨(骸骨)を表す金属製品などが付いています。

これは、おそらく、イニシエーションの時に、シャーマンの骨格が作り変えられて、特別な骨格になっていること、つまり、シャーマンの再生した特別な身体を表現しているのでしょう。


また、シャーマンの衣装には、悪霊を追い払うための象徴的な飾りが多数付けられています。

例えば、袖や背中に鈴やガラガラが付いていて、これを鳴らすことで悪霊を追い払います。
背中には金属製の弓矢などの武器が付けられています。
金属製のクマや鷲などの鉤爪が付けられています。
ユルゲン(天神)の娘たちのような主要な神霊の像が付いています。


シャーマンの衣装は、その宇宙観を表現しています。

衣装には、シャーマンが飛翔して体験した、世界やその精霊の絵が描かれています。

また、帽子には、天を表現する動物である猛禽類の羽などが付いています。
上着の肩にも、鳥や太陽の象徴品が付けられています。

一方、上着の下部や靴には、地下世界に関わる動物である、ヘビやクマを象徴する品が付けられています。

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*シベリアのシャーマンの衣装



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浄化の儀式 [イニシエーション]


アルベルト・ヴィジョルドがペルーの高名なシャーマンのドン・エドゥアルド・カルデロンから受けた集団的なイニシエーションにおける「浄化」の儀礼を紹介しましょう。
これはインディアンのシャーマンが、シャーマンの道をインディアン以外の人間に伝えるために、様々な国籍の人間を集めて行われた儀礼の報告です。

この儀礼の目的は、シャーマンの道を歩むにあたって、イニシエーションの際に、その人が持っている過去の心の傷を癒すことです。
シャーマンは、一定の意味で、偏りなく、客観的に、霊的な世界を見なければいけません。
ですから、トラウマを持っていると、シャーマンの仕事に大きな支障となってしまうのです。


その「浄化」の儀式は、「力の場」と呼ばれる特別な場所の一つである、地上絵のあるナスカ高原で行われました。
そのシャーマンによれば、ナスカに描かれた動物絵は、すべてシャーマンが獲得すべき力と知恵(スピリット・ヘルパー)を表しているのです。
そして、古くからの言い伝えによると、ここは「浄化」の場所だそうです。

深夜、「針と糸」と呼ばれる螺旋を含む絵の中心部に、シャーマンが様々な呪物(パワー・オブジェクト)を並べた祭壇を設けます。
次に、儀式の成功を土地の霊、東西南北の四方を司る霊や様々な霊などに懇願します。

そして、幻覚効果のある液体を、参加者全員が飲んで、儀式を始めます。

まず、イニシエーションに臨む人物は、各人が獲得すべき力を示す「パワー・オブジェクト」をもらって、中心部から螺旋を歩んでいきます。

すると、歩んでいる間に、浄化されるべきものが各人の周りに現れ、それが暗闇の中で霊視されます。 浄化されるべきものは、精神的外傷や、取りついた霊的存在などです。


それらを霊視するだけで、癒やされる場合もありますが、障害が強い場合は、火を使った儀式を行います。

治療されるべき人間は、剣を持ち、地面に描かれた輪の中に入ります。
すると、シャーマンが、歌とガラガラでその原因となるものを呼び集め、輪の中にある薪に火がつけます。

治療されるべき人間は、その上を何度も飛び越えます。
最後に、残り火を踏みつけて消します。

その後、幻覚効果のある液体を飲んで、剣を高く掲げてその力を自分のものとします。

シャーマンは、障害の原因について問いただしたり、解釈したりする場合もあります。
ですが、原因を理解することは重要ではなく、むしろ邪魔になると考えることが多いのです。

「浄化」の儀式の本質は、トラウマを具体的なイメージとともに客観視し、それを消すような象徴的行為を行うことにあるようです。


ちなみに、一般に「螺旋」は、中心に向かって進むのは、冥界=死に至ることを象徴します。
中心から進むのは、地上=再生に至ることを象徴します。
「浄化」の儀礼の意味を考えると、まず、中心に向かって進むべきではないかと思います。

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ドラムの魂の獲得 [イニシエーション]

シャーマンにとってドラムは天上世界や地下世界に飛翔するために必要な、非常に重要な道具です。
ドラムは、その音が飛翔の推進力として働きます。

他にも、精霊を招くために使ったり、トリップする際の舟として使ったたり、霊を救い上げる容れ物として使われたりすることもあります。
ドラムはシャーマンの象徴でもあります。
ですから、ドラムは自分だけのものでなくてはなりません。

一般に、アルタイ、シベリアのシャーマンのドラムは、片方に鹿か馬の皮を張ります。
ドラムに使う木枠は、人里離れた樹から取り、その樹には供犠獣や酒を供します。
場合によっては、雷が落ちた樹や、曲がった樹を使います。
神話的には「世界樹」から作られるべきものです。

オルガ・カリテディーによれば、アルタイの新入りシャーマンが、自分のドラムを獲得する際には、そのドラムの皮である鹿の魂そのものをドラムに入れなければなりません。
これは、捕まえた鹿の皮から、物理的にドラムを作った後の作業として行います。

その新入りシャーマンは、すでに亡くなっていた先代シャーマンによって、この作業を助けられました。
彼は、先代のシャーマンによって、トランスのヴィジョンに引き込まれたのです。

彼は、ヴィジョンの中で、その鹿が生まれる直前にタイム・トリップしました。

その子鹿が生まれるやいなや、新入りシャーマンは自分で子鹿を捕まえます。
そして、それを現代に持ち帰り、そのまま、現実世界のドラムに、手でその魂を押し込んで入れます。
こうしてドラムは魂を持ったものとなって初めて、シャーマンのトランスを助ける道具となるのです。

一般に、ドラムには、他の複数の精霊を入れることもあります。

その後、ドラムには、シャーマンが飛翔して見た世界の様子や、地図を描きます。

また、シャーマンが亡くなった時には、誰かがドラムを破り、その魂を返してやらなければなりません。

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*南シベリアのシャーマンの太鼓に描かれた図(シャーマニズムの世界)
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火と金属と鍛冶、光と水晶 [イニシエーション]

<火>

あるイヌイットの女性は、火の玉のような流れ星に打たれ、炎が体の中に入るヴィジョンを得て、シャーマンとしての力を得ました。
このように、シャーマンは「内的な火」を持っているとされます。
おそらく、トランス状態に入ることは、「内的な火」のコントロールと関係していると考えられているのでしょう。

「火」は霊的エネルギー、力そのものです。
また、「火」によって燃やされないことが物質的存在ではなく魂的存在であることの証明であると考えられています。
ですから、「火」は浄化をもたらす存在でもあるのです。


<鍛冶と金属>

そのような理由から、火をコントロールする「鍛冶」はシャーマンの兄弟的存在と考えられることが多いのです。
「太陽」、「鉄」、「火」といった「鍛冶」に象徴的に関連づけられている要素が、シャーマンにも関係づけられています。

ですから、太陽の使いであってシャーマンの守護霊である「鷲」が、「鉄」の羽根を持っていたりします。

また、シャーマンにイニシエーション時の精霊が、鍛冶の性質を持っていて、鉄製の機具でシャーマンを解体することもあります。
あるいは、八つ裂きにさした体を、煮立った大釜鍋の中に入れて、それを溶かして金属し、それを鍛冶屋のようにして金属のシャーマンの体を組み立てることもあります。

また、シャーマンの力は金属で象徴されるため、シャーマンは金属の飾りをたくさん身につけています。

このように司祭としてのシャーマンが鍛冶的性質を持つことは、秘儀宗教にまで受け継がれています。
また、錬金術とも関係しているでしょう。


<光>

「火」とともに、「光」もシャーマンにとって重要な要素です。

「光」は暗闇と地下世界での視力、つまりシャーマンのトランス状態での「霊視」能力を支える力の象徴です。
多くのシャーマンは完全なシャーマンとなる途中で、強烈な「光」の体験を経験して「霊視」能力を得ます。

トランス状態のシャーマンは頭から光(オーラ)を放っていて、同じトランス状態のシャーマンはこれを見ることができると言います。
岩壁や洞窟の絵画でも、シャーマンの頭からは光を発している姿で描かれます。


<水晶>

その「光」を貯めた「パワー・オブジェクト」が「水晶」とされます。
「水晶」は、「光を凝縮した物」、「精液の結晶」、「天の霊の涙」などであると考えられていて、太陽や天上界とも関係づけられています。

そのため、イニシエーションの時に、シャーマンの体に埋め込まれることもあります。
また、シャーマンになる者は、必ず、自分の特別な「水晶」を所有しています。

「パワー・オブジェクト」は、何からの力をもった呪物で、一般に、シャーマンが霊視する魂の世界では、「援助霊(スピリット・ヘルパー)」として、物質の世界とは別の姿をしています。
ですが、「水晶」だけは、姿が変わらないとされます。

オーストラリアのアボリジニーでは、「水晶」は至高神・最高の男性原理の象徴です。
それは、最高の女性原理である「虹(虹蛇)」を生み出します。


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イニシエーションの飛翔 [イニシエーション]

シャーマンになるためのイニシエーション(通過儀礼)は、数日から長期に渡ることが一般的です。

本質的なイニシエーションは、トランスや夢などのヴィジョンの中、霊的な世界で行われます。
その時に、天上世界への「上昇(飛翔)」、地下世界への「下降」、身体の「解体と再生」の3つが必須の体験です。

天上世界と地下世界への旅は、それぞれの世界を知り、そこにいる霊的存在を知り、知己を得ることが目的です。
シャーマンになることを決めた「精霊」や「先代シャーマン」が「守護霊」に引き合わせてくれたり、彼らのいずれかが霊的な世界を案内し、シャーマンにとって必要な術を教えてくれます。


必ずしも順番は決まっていませんが、まず地下世界へとトリップします。

シャーマン候補者は、地下世界へ通じる穴から地下世界に降ります。
その前後で、険しい山を越えたり、森を抜け、蛇や怪物などの障害を克服して進みます。

地下世界では、川に架かった細い橋を渡って進みます。
橋の上には魂を食う怪物がいたり、橋の下には先に死んだシャーマンの骨が落ちていたりします。

あるいは、苦悶する死者で満たされた川や海を舟で渡ったりします。

そして、地下世界の「精霊(怪物)」のもとで、体を解体され、再度組み立てられ、新たにシャーマンの能力を持った存在として再生する体験をします。
これによって彼は、病気の治療の能力、知識を得ます。

*この解体・再生のヴィジョンについては、次のページを参照ください。

また、シャーマンは、「死者の国」の場所や行き方、「死者の国の王」などを知ります。

そして、シャーマンは、鳥(パワー・アニマル、補助霊の鳥)に乗るなどして地上へ帰ってきます。


次に、シャーマンは天上世界に昇ります。
ですが、高い層の天上世界ほど、簡単には行けません。

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*エスキモーのシャーマンが守護霊達と共に飛翔する絵(シャーマン)

シャーマンは、例えば、「世界樹(世界柱)」を昇って、北極星のすぐ横にある天の穴からその上の天上世界に上がります。

そして、彼は天上の様々な霊的存在と交流して、太陽や月にも行きます。
太陽は多くの場合、「守護霊」的な存在であるか、その天の至高神です。

そして、シャーマンは太陽の使いである鷲に乗ったり、自分自身が鷲に変身したりして、飛翔します。
ですが、飛翔は帰り道を見失うことにつながるので注意が必要です。


このように、シャーマンはトリップによって、宇宙の構造や、天上の神々、死者の世界、動物の主の居所などを把握します。
そして、それらの霊的存在達とコミュニケーションを取って関係を構築します。
そのための飛翔は、シャーマンとしての仕事を行うための必須の体験です。


このシャーマンのイニシエーションにおける飛翔に似た体験は、後世の秘儀宗教や、ユダヤのメルカーバー神秘主義、ゾロアスターやムハンマドの天界の旅などにも見ることができます。

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召命とシャーマン病 [イニシエーション]

伝統的なシャーマニズムの社会では、シャーマンは自ら望んでなるものでもなく、自らの力でなれるものではありません。
確かに、世襲や、先代シャーマンによる選別、自らの希望によってなど、様々な形でシャーマンになる者が決められることはあります。
ですが、最も本質的なのは、霊的存在による選別です。

本来的なシャーマンは、通常、精霊達が次のシャーマンを決めて、それを先代のシャーマンに告げます。
そして、先代のシャーマンが新入りのシャーマンを仕込むのです。
世襲で選ばれる場合も、長子相続ではなく、精霊が選ぶこと、つまり、「召命」が条件となります。

この教育は現実世界だけでなく、先代シャーマンや精霊達によって、夢やトランス状態の霊的ヴィジョンの中でも行われます。
シャーマンの本質的な教育は、霊魂の世界でしか行えないのです。

ですが、先代シャーマンが生きているうちにシャーマンの技術を伝えられるとは限りません。
こういった場合、先代シャーマンや先祖のシャーマンが魂の世界からヴィジョンを通じて教育を行なうのです。
偉大なシャーマンは魂の世界に留まり続けて、再生することがないと考えられています。
こういった偉大な先祖シャーマンが教えるわけです。


シベリア、アルタイのシャーマニズムの教えを受けたオルガ・カリティディーによれば、本当のシャーマンは「世襲」されるものです。
ですが、それは父が子を選んで教えるといった地上的な「世襲」ではありません。

代々のシャーマンは同じ精霊(守護霊)や先祖シャーマンの導きでシャーマンとなります。
ですが、代々のシャーマンは別の人間だとしても、同じ精霊(守護霊)と同じ力を身につける点で、同一人格のシャーマンになると考えることができるのです。

モンゴル、シベリアのソーラ族の女性の系統のシャーマンの場合、地上の夫とは別に地下の精霊と結婚をします。
そして、この同じ地下の精霊が代々の女性シャーマンと結婚をするのです。


一般に、幼い頃から孤独を好む夢見がちな性格を持っている者が、シャーマンに選ばれる傾向があります。

ですが、シャーマンに興味を持たず、シャーマンになりたくないと思っている者が、「召命」されることも多いのです。
この場合、本人が否定しても、霊的な世界の精霊達、先祖のシャーマン達の強い誘いによって心身が不調になって、しかたなくシャーマンにならざるをえなくなります。

通常、シャーマンになることを受け入れるまで、長い期間に渡って、疾患的な状態を経験します。
これは「シャーマン病」と呼ばれ、幻覚、無気力、夢遊、ヒステリー性発作、けいれん、動物的行動などを伴います。
この状態は、トランスによるヴィジョンを引き起こし、シャーマンとしてのイニシエーションや教育につながります。


精霊や死んだシャーマンの働きかけを、新入りシャーマン自身の無意識の働きであると合理に解釈することもできるでしょう。
シャーマンになることに対する部族からの期待を無意識が感じていたり、自分の性格が一般的な社会に不適応であると無意識で判断していたりして、無意識がシャーマンになる道を選ぶのだと、解釈することもできるわけです。

ですが、生きていた先代シャーマンからの教えを受けずに、知識を持たない者が、ヴィジョンの中からの教育だけで、高度な技術や知識を持つ立派なシャーマンになる場合もあるのが不思議です。

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