シャーマニズム的な神話とコスモロジー ブログトップ

マヤ/トルテカのシャーマン的神話とコスモロジー [シャーマニズム的な神話とコスモロジー]

南北アメリカのネイティブな文化は、主に北アジアからやってきたモンゴロイドのシャーマニズム的文化をもとに発展しました。
中でも高度な古代文化を築いたのはメソアメリカと呼ばれるメキシコと中央アメリカのマヤ地方です。

マヤ/トルテカに代表されるメソアメリカの文明は、この地方の多くの都市の数千年に渡る交流の中で発展しましたが、南アメリカのインカのように統一的な帝国は生み出しませんでした。
主要な都市国家は、メキシコ湾岸のオルメカに始まり、メキシコ高原のテオティワカン、そして、ティカル、パレンケ、チチェン・イツァ、コパンといったマヤの諸都市、メキシコ高原のトルテカ、アステカと流れました。


マヤ/トルテカの宇宙像で、大地をささえるワニの体の中心から生命の樹でもある世界樹が生えています。
この世界樹は十字の形をしています。
世界樹は天球では天の河でもありました。

パンヤの木が世界樹、ピラミッドは人工的に作られた世界山で、天と冥界に通じていました。
天上世界は13層、地下世界は9層からなります。

体の中には、一種の生命の樹があります。
これをつたって体の中を昇降する霊的エネルギーは、「天の雫(体の稲妻)」と呼ばれます。
そして、体に3つの霊的センター(頭頂、心臓、肝臓)があると考えました。 インドや中国で発展した霊的生理学に近いものが、マヤ/トルテカにもあったのです。

マヤ/トルテカをはじめ、南北アメリカでは、主な、穀物は「トウモロコシ」、狩られる動物は「バッファーロー」、狩る動物であり夜の太陽、地下の象徴は「ジャガー」でした。
そして、時間と関係した原初の存在は「蛇」、太陽の鳥は「鷲」、解放をもたらす鳥は「ケツァル鳥」でした。
王は、シャーマン的な司祭であって神の化身でした。 また、司祭達は、精神的な成長によって第2の心臓と顔を作ることによって、太陽を養うことを目標とします。
第2の心臓は浄化された魂、第2の顔は浄化された人格を象徴するのでしょう。

マヤ/トルテカの世界観の中には、この不死への道が数多く象徴的に示されています。

その一つはマヤ/トルテカのコスモロジーの核心に位置する神聖暦「ツォルキン」の中にもあります。
この暦の1年は20×13=260日からなりますが、20の象徴体系は、人間が生まれてから不死性を獲得するまでの精神の遍歴を象徴します。

トルテカの神話における中心的存在は「ケツァルコアトル」です。

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ケツァルコアトルは半神半獣半人の存在で、風鳥であり、水蛇(天と地の象徴)であり、金星神であり、生命の樹であり。そして、王=神官の理想の姿であり、その世襲名なのです。
緑青の翡翠とケツァル鳥が彼の象徴です。

ケツァルコアトルは、月の女神と太陽の息子として生まれ、人身御供を行わない優しい王=神官になりました。

ケツァルコアトルは、自然の気紛れな力を象徴するトリックスター的な神「テスカトリポカ」から様々な試練を受けました。
また、彼は、人間の魂を転化して作られたトウモロコシを盗みました。
そして、冥界に下って、地下の動物達に助けられて、父を遺骨から復活させ、鷲に乗って天に帰りました。

ですが、ケツァルコアトルは、悪者に酒を飲まされ、妹と近親相姦をしてしまい、自分を火葬し天に昇ります。
そして、心臓が金星(明けの明星)になります。
金星である彼は地下に下り、石棺に入って8日後に復活しました。
そして、いつか帰ってくると言い残して、蛇の筏に乗って異界へ去りました。
トウモロコシを盗む、動物の手助け、冥界下り、鷲との飛翔などは、シャーマン的な要素です。
ですが、彼が父を復活させたり、自身が復活したりして示した不死性は、単なるシャーマンではなく特別な英雄神の特徴です。

トルテカの宗教の実態は不明ですが、不死性を獲得したシャーマン的な英雄神を神官の目標とする、シャーマニズムの発展した思想を持っていたと推測できます。


また、マヤの有名な神話「ポポル・ヴフ」も、死と再生の試練を経て、不死性を獲得した双児の英雄神の物語です。

ケツァルコアトルや「ポポル・ヴフ」の神話には、天体や穀物の復活と重ねて、人間の精神の霊的成長が象徴的に語られているようです。

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三星堆(長江文明)のシャーマン的コスモロジー [シャーマニズム的な神話とコスモロジー]

第5の古代文明と言われる南中国の長江文明は、麦作の4大文明と違って稲作の文明です。長江文明は黄河文明に負けない古さと規模を誇りました。

長江上流の「三星堆」文化は黄河地方の中原からは「屬」の国と呼ばれていました。
屬は殷と敵対し、周と共に殷を滅ぼしましたが、秦によって滅ぼされました。
三星堆文化は宗教的にも中国の文化に大きな影響を与えました。

後の時代に、長江系の文化は黄河系の文化に追いやられましたが、長江系の文化を継承する南中国の人達が弥生文化に大きな影響を与えたのではないかと推測されます。

屬のコスモロジーは考古学的な遺物と後世の南中国地方の神話の断片的な記述によって推測することしかできませんが、シャーマニズムと共通する部分、日本に影響を与えている部分をまとめます。


屬の宇宙像では、世界の中心には世界山の「昆崙山」と、世界柱の「建木」があり、ここから四方に4つの川(これが「四川」地方の由来です)が流れます。 典型的なシャーマニズムの宇宙像です。

「建木」は水に囲まれた九つの丘の近くにあり、2本の幹がねじれ合った縄のような姿をしています。
その頂きには人面鳥身の神人がいます。
この樹は神々やシャーマンが天地を昇降する時に使います。

「昆崙山」の山頂(洞窟)には「西王母」という大女神がいます。
彼女が屬の主神で、実際の国政でもその化身としてのシャーマン的な女王が君臨していました。

西王母は虎の牙と豹の尾を持った半人半獣の姿をしています。
また、西王母は4角の山羊の像を頭につけた杖を持っています。 彼女には、「動物の女主」としての側面があります。

さらに、彼女は、不死をも司りました。
屬には神仙思想の原型があって、西王母は仙人の頭領的存在だったのです。

また、彼女は機織り(養蚕)も司ります。

日本のマテラスオオミカミやシラヤマヒメにも、西王母の面影を見ることができます。


西王母には多くの部下達(眷属)がいます。
不死の霊薬を作る「玉兎」(月で餅をつくうさぎの原型です)と、それを助けるヒキガエル、「九尾狐」(日本にもやってきて、稲荷の白狐にも影響を与えました)、「三青鳥」、などです。

月は「玉兎」とヒキガエルに象徴されます。

一方、太陽は、太陽を運んで飛ぶ三本足の「金烏」(日本では熊野神社やサッカーのナショナル・チームのシンボルで知られます)、あるいは、イヌワシに象徴されます。

昆崙山の西には「湯谷(若水)」という湖(?)があってそこに巨樹の「扶桑(若木)」が生えています。
太陽は10個あり(十干のもとになった考え方です)、毎日一つずつ順に、この樹をつたって昇り、頂きにあるつぼみから生まれ出ます。
そして、太陽は毎日、最後に湯谷に浸かってからこの樹に戻ってそれぞれの枝で休みます。
「扶桑」は太陽樹なのです。

また、それぞれのつぼみの上には烏(イヌワシ)がいて、1羽だけは樹の頂きにとまっています。また、この樹をつたって額から鼻にかけて突き出た角を持った赤い龍が昇降します。
太陽の光は最初に「磐木(桃都樹)」という樹に差します。
そして、その上にとまっている「天鶏(蚊取り線香の金鳥の原型です)」が最初に鳴くと、それに答えて太陽を運ぶ金烏や地上の鶏が鳴きます。
また、この樹の根元には鬼門(冥界への入口)があり、そこには2人の神人がいて鬼(死者)を退治します。 「磐木」は第二の世界樹のような存在です。

地には偉大な祖先神の「燭龍(蚕叢)」がいます。
これは人面龍身で突き出た縦長の目を持つ赤い龍で、2匹の人面龍(息子?)を従えています。
燭龍が目をつむると夜になり、目をあけると昼になるなど、天体や気象を司ります。
燭龍か2匹の龍は、扶桑を昇降する龍かもしれません。

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シャーマニズムとしての魔女宗 [シャーマニズム的な神話とコスモロジー]

中世から近世のヨーロッパで注目され、誤解され、弾圧された「魔女(ウィッチ、ウィッカ)」の宗教は、「魔女宗(魔女術、ウィッチクラフト)」と呼ばれます。

ですが、「ウィッチ(witch)」という言葉には「妖術師」というニュアンスがあるのに対して、「ウィッカ(wicca)」は、「賢い女性」という意味で、ドイツでは「ヴァイズ・フラウ(weise frau)」と呼ばれます。
また、イタリア北東では「ベナンダンティ(良き道を行く人達)」とも呼ばれました。

「魔女宗」の正体は、キリスト教以前のケルトなどの宗教的儀式や呪術的医療などを受け継ぐものです。
そして、それは、アルタイやシベリアなどのシャーマニズムからの強い影響を受けたものなのです。
魔女は一種のシャーマン的存在だったのです。

キリスト教は「魔女宗」を「サタニズム(悪魔崇拝)」だとしましたが、実際は、「ペイガニズム(異教主義)」でした。


魔女宗の中心テーマは、豊穣な自然の循環・再生です。
トランス状態で地下冥界に行き、悪霊達と戦って穀物の種(穀霊)を持ち帰る、というユーラシア各地で見られるシャーマンの新年儀礼などに、魔女宗の原型的な姿を見ることができます。

ヨーロッパ中世には、男女別々の魔女の秘密結社がありました。
魔女の宗教のメンバーには、もちろん女性だけでなく男性もいました。

魔女達はベニテングダケや麦角などの幻覚性の飲食物をとったり、体に軟膏をぬったりして、シャーマンのようにトランス状態になりました。
魔女達はシャーマンと同様に、パワー・アニマル(スピリット・ヘルパー)に変身したり、それに乗ったりして霊的世界に飛びます。

女性の魔女は、猫(女神フレイヤに仕える動物)や兎に乗ることが多かったようですが、箒に乗って飛ぶことは、アルタイ/シベリアのシャーマンが、馬を模した棒に乗ることから来ています。

アルタイ/シベリアのシャーマンは、馬の霊に乗って天に駆け昇ることを、馬の毛や頭を模したものを先端につけた棒に乗ることで、象徴的にパフォーマンスしたのです。
魔女の箒は、これを出産の象徴でもある箒に替えたものです。
ですから、正しい箒の乗り方は、掃く部分を頭にして、柄に軟膏を塗るのです。


魔女達が行った行為は、地域によって差があります。
ヨーロッパの北方では、魔女は飛行する者というイメージが強く、個人主体で、男性重視、狩猟文化の影響が大きいものです。
一方、南方では、魔女は魔術師、占い師というイメージが強く、集団行動主体で、女性重視、農耕文化の影響が大きいものです。

女性の魔女は、ヨーロッパの西部では、女神(ディアーナ、ペルヒタ、ホルダ、フレイヤなどの各地の月神や豊穣神、地母神など)が動・植物を再生させるのを助けたり、悪い魔術師達が麦の芽を奪ったのを取り返したりしました。

一方、東部では、女神に付き添って巡り歩く旅を行いました。

男性の魔女は、オオカミに変身したり、地下世界に降りたりして、男神(主神や有角神など)が豊穣を害する悪魔達と戦うのを助けたりしました。
これが狼男(狼憑き)の本来の姿です。

また、男神が率いる死者の群れに関わる場合もあります。
これらの集団は、「狩猟」とか「軍勢」、「結社」などと呼ばれました。

ヴォータンのような天の主神が、嵐の夜に死霊の群れを引き連れて「狩り」をして暴れるといったゲルマンの死霊信仰があります。
一方、年末などに祖霊がやってきて、悪霊(死霊)を追い払い、年を更新して新年を祝う信仰があります。
死霊の群れは、シャーマンが戦い、導くべき存在のはずです。


このような魔女の集まりは、「サバト」と呼ばれましたが、この言葉のもともとの意味は、ユダヤ教の「安息日」、イタリア語では「土曜日」のことです。
「サバト」は、シャーマン的魔女達がトランス状態で、魂の世界で、もしくは、現実世界で集まって行うものでした。
これは、キリスト教以前の伝統的な農耕・狩猟儀礼と関連していますが、その秘儀的な部分です。

「サバト」には、一ヶ月毎に行うものと、一年の祝祭として4-8回行うものがありました。
ベナンダンティは、年に4回、悪い魔術師達(マランダンティ)と戦いました。

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ケルトのシャーマン的神話 [シャーマニズム的な神話とコスモロジー]

ケルト人はゲルマン人が大移動する前にヨーロッパに住んでいた先住民です。
ケルト人はインド・ヨーロッパ語族に属しますが、その宗教や神話については、あまり良くわかっていません。

ケルト人は農業・牧畜文化を持っていましたが、古層には狩猟文化の残存も見られます。
そして、そのコスモロジーには、シャーマニズムの影響も見ることができます。


ケルト神話では、世界の中心に生えるイチイが世界樹であり智恵の樹です。
イチイの樹の果実が泉に落ちて、それを食べた鮭が智恵を得ました。
また、この樹は魂の樹をも呼ばれます。

ケルト人は、馬を聖なる動物として重視しました。
ケルト人にとって、魂を天に運ぶのは馬です。
ケルトでは、「エポナ」や「リガントーナ」のような馬の女神が重視されますが、彼女達は死者を乗せて他界に運びます。

ケルトの地母神(モーリーガン、マトロナ、ブリギット…)とカップルとなる男性神は、動物の主である鹿の角を持つ神「ケルヌンノス」、あるいは、祖神の「ダグダー」です。
ケルヌンノスは冬に地下で地母神と交わり、春には角をはやして地上に現れます。 ケルヌンノスは、「動物の主」のような存在です。

ケルトの重要な神器に、「ケルトの大釜」と呼ばれるものがあります。
至高神である「ダグザの大釜」とも呼ばれます。

アイルランドやウェールズの神話伝承では、これは豊穣と再生の象徴です。
つまり、食物を生み出し、死者を生き返らせます。

また、予言と知恵の象徴でもあります。

大釜には、生贄の血を注いだり、その中で溺死させたりしたという伝承もあります。

おそらく、大釜は、シャーマニズム世界観で「動物の女主」が持つ、動物を無限に産み出す袋や鉢のケルト版でしょう。
また、大釜は、聖杯伝説の聖杯の観念のもとになった要素の一つでもあります。


ケルトの司祭・神官は「ドゥルイド」と呼ばれ、様々な儀礼や予言を司りました。
ドゥルイドはシャーマンではありませんが、ドゥルイドの中にはシャーマン的な側面を保持している者もいました。

鹿の角の付いた頭飾りが見つかってので、鹿に変身するシャーマンの存在が推測されます。
また、アイルランド南部の偉大なドゥルイド、モグ・ルートは魔術師で、雄牛の皮と鳥の頭飾り・翼を身につけて、空を飛ぶと伝えられています。
他にも神話に伝えられるあるドゥルイドは、鳥によって神託を得たりしたとされます。

伝統的なケルトの宗教(ドゥルイディズム)は初期近代に消滅したと思われます。
ですが、しばらくして、その復興運動が起こり、現代では多数のネオ・ドゥルイディズムの団体が存在し、オーディニズムやウィッカなどのネオ・ペイガニズムと連動した活動を行っています。


アーサー王神話群にも出てくる魔術師の「マーリン」には、ドゥルイディズムとキリスト教の習合によって生まれた伝説的人物です。
「マーリン(ミールディン、メルジン)」という名前は、「メルクリウス」(シャーマン神であったヘルメスと習合したローマの神)から来ているのかもしれません。
彼の伝説にもシャーマンを思わせる要素があります。

マーリンは、鳥の姿で現れた精霊を父にして生まれます。
彼はアーサー王などに仕え、様々な予言をしました。
彼は金の竪琴で歌う詩人でもありました。

ですが、戦争で人が死ぬのを見て精神を病み、森の中に籠って動物達と暮らして、様々な動物に変身しました。
冬の間は妹と共に館に暮らし、夏には森を駈けました。

様々な動物に変身すること、予言や竪琴は、シャーマンの特徴です。
マーリンにはケルヌンノスの特徴も投影されています。

マーリンは、湖畔の女の精霊を愛し、彼女に病気治療や動物と話をする方法、雨の降らせ方や魔法を教えました。
ですが、彼女に教えた魔法によって、彼女のもとに永遠に閉じ込められてしまいました。
病気治療、動物の言葉、雨乞いは、シャーマンの典型的な特徴です。

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ギリシャのシャーマン的神話 [シャーマニズム的な神話とコスモロジー]

ギリシャ人はインド・ヨーロッパ語族に属しますが、ギリシャ神話には周辺の諸民族の影響も取り入れています。

ギリシャ神話の宇宙論には、直接的にはシャーマニズムの宇宙像を見つけることはできません。
ですが、シャーマン的な性質を持つ神や英雄はいます。


最もシャーマン的な神は「ヘルメス」です。
ヘルメスの中のシャーマン的要素は、以下のような神話に現れています。

ヘルメスは洞窟にいた女神を母に、天空神ゼウスを父にして、早朝に生まれてすぐに洞窟から出ました。
彼は夜のうちに神々の山にいるアポロンの牛を盗んで殺し、洞窟の屋敷に戻って2頭を神々に捧げました。

洞窟の女神や、動物を盗む、動物を捧げるというのはシャーマンの特徴です。

また、ヘルメスはその出口で見つけた亀から最初の竪琴を作り歌いました。
彼はアポロンの怒りを竪琴で鎮めたので、アポロンに竪琴を渡す代わりに牧人として認められました。

シャーマンの楽器としては、ドラムやガラガラが最も多いのですが、竪琴もシャーマンの楽器でしょう。
古代の日本の巫女も琴で神憑りしました。

また、ヘルメスは、パルナッソス人の3姉妹の予言、動物の支配権、冥界へ赴く使者の役、神々の使者の役を得ました。
そして、「魂の導師」と呼ばれ、黄金の杖によって人々の魂を導きます。

予言、動物の支配、冥界と神々の使者、魂の導師は、シャーマンの特徴です。

また、テッサリア地方の神話では、ヘルメスは男根の石柱で表され、大女神の息子であり恋人です。
太母(動物の女主)の恋人(男根)は、シャーマンの特徴です。


英雄神「ヘラクレス」にも、一部にシャーマンの性質があります。

彼が行った偉業の多くは、牛や鹿などの聖獣(怪獣)を奪うことや、冥界の番犬ケルベロスを退治して冥界に捉えられていたテセウスらを助け出すといったものです。

これらはシャーマンの要素と似ています。


秘儀の創始者と言われる伝説の人物「オルフェウス」にも、少しシャーマンの要素を見ることができます。

オルフェウスは、死んだ妻を助けようとして冥界に降り、竪琴で冥界の存在を魅了しました。
残念ながら、途中で後ろを振り返ったために失敗しましたが。

また、彼はディオニュソスの秘儀の女性信者達によって八つ裂きにされ、彼の首は川に流されました。
ですが、彼の首はレスボス島に流れついて、ディオニュソス神殿に埋葬されましたが、予言を下し続けました。

魂を取り戻すための冥界下り、竪琴、八つ裂き、予言にはシャーマンの要素があります。

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ゲルマン/北欧のシャーマン的神話とコスモロジー [シャーマニズム的な神話とコスモロジー]

インド・ヨーロッパ語に属する北欧/ゲルマン神話のコスモロジーは、アルタイ、シベリアのシャーマニズムのそれと似ていて、影響関係があったと推測できます。

北欧神話では世界は3つの層、つまり、神々と英雄の戦死者が住む天の世界「アースガルド」、人間と巨人、小人が住む地上世界の「ミッドガルド」、死者が住む地下世界「ニヴルヘイム」からなります。

世界の中心には巨大な世界樹「ユグドラシル」が生えていて、3つの根が3つの世界に伸びています。
ユグドラシルは甘露をしたたらせ、実をつけています。

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*3界を貫くユグドラシル(「スノッリのエッダ」の英語訳本の挿絵)

そのてっぺんには主神「オーディン(ゲルマン神話では「ヴォータン」)」の玉座があり、「鷲」がとまっています。
下方では鹿が新芽を食べて、一番下の根は悪龍「ニドヘグ」がかじっています。

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*多くの動物を住まわせるユグドラシル(アイスランドの写本「AM 738 4to」より)

3つの根元には泉があって、アースガルドの泉は3人の運命の女神が守り、ミッドガルドの泉は巨人「ミーミル」が守る智恵の泉で、ニヴルヘイムの泉の近くには悪龍「ニドヘグ」がいます。

以上の、3世界構造や世界樹、泉、そこにいる動物達は、典型的なシャーマニズムの宇宙像です。


主神の「オーディン」は、様々な側面を持っていますが、シャーマン的な特徴も多数持っています。

オーディンは、ユグドラシルに吊り下げられて脇腹を槍で貫かれ、智恵の象徴であるルーン文字を得ました。
また、巨人の血から作られた詩の霊酒を手に入れるために巨人の国に旅をしたり、霊感と知識を得るために片目と引き換えにミーミルの泉の水を飲みました。

そして、オーディンは、8本足の馬に乗って、天から地下まで行き来し、彼や彼の馬は死者を死者の国に連れて行きます。

霊界に自身を犠牲にすること、智恵を得ること、3界を飛翔、他界の旅、死者の魂を死者の国に導くのはシャーマンの特徴です。
また、片目や片足は、半分冥界にいる者、つまり、シャーマンの象徴です。

Odin.jpg
*オーディン(18世紀のアイスランドの写本「NKS 1867 4to」より)

また、彼は魂となって体から抜け出たり、彼は鷲の姿になって飛ぶことができます。
ユグドラシルにとまる鷲は彼自身とも言われます。
そして、彼は肩の上には2羽の大カラス(ワタリガラス)を乗せ、2匹の狼を連れています。

動物に変身した脱魂、多数のパワー・アニマルやスピリット・ヘルパー的存在を持つことは、シャーマンの特徴です。

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イラン/インドのシャーマン神話とコスモロジー [シャーマニズム的な神話とコスモロジー]

インド・ヨーロッパ語族に属するペルシャ/インド神話のコスモロジーは、アルタイ・シベリアのシャーマニズムのコスモロジーと似ていて、影響関係があったと推測できます。


<イラン>

イラン神話の宇宙像は、典型的なシャーマニズムの宇宙像です。

世界の中心には世界山の「アルブルズ」があって、山頂からは天に橋がかかっています。

また、その近くには2本の聖樹があります。
「白ハオマ樹」という生命の樹と、「百種樹」というすべての樹木のもとになった大母樹です。
この樹には「サエーナ鳥」が巣食っていて、この鳥が羽ばたくと種がばらまかれます。
この樹を悪魔のトカゲが狙っていますが、10匹の魚が守っています。

また、半人半牛の「ゴーベッド・シャー」が守る天の牡牛「スリソーク」がいます。
この牛が終末の日に供犠として捧げられると、人間が不死となります。
つまり、この牛は「生命の牛」なのです。


英雄王の「イマ」は、一種の「文化英雄」、「祖神」であるため、シャーマンに似た要素がわずかに見られます。
彼は、恐ろしい冬が3度襲ってくると創造主に警告された時に、巨大な洞窟を作ってあらゆる生き物の種をここに入れて守りました。

また、イランの天空の光神「ミスラ」の神話をもとにして、後のヘレニズム時代のトルコで作られた「ミトラス神」の神話には、さらに多くのシャーマンの要素を見ることができます。

悪神によって寒い冬が訪れて生物が死滅し、聖牛も連れ去られました。
この時、冬至に、ミトラスは稲妻として洞窟に降り、岩から生まれ出ました。

彼は地上を照らすように太陽神に話をします。
そして、聖牛を見つけて洞窟に運び、供犠として殺すことによって、世界を浄化して豊饒な存在に戻し、魂が循環する道を作り直しました。

その後、地下世界に行き悪神を改心させました。
この間に地上では旱魃が起ったので、岩を射て泉をわき出させました。

最後に彼は戦車で天に昇りました。
このように、天上や地下の神と交流して、天候など世界をあるべき姿にし、牛を連れ戻して洞窟で祭儀を行い、魂の循環を正しくする、これらの点は、「文化英雄」の特徴でもあり、シャーマンの特徴でもあります。


<インド>

インド神話にも、イラン同様に、典型的なシャーマニズムのコスモロジーがあり、シャーマン的な神話もあります。

ここでは、ヒンドゥー教の聖典「プラーナ」の宇宙論を扱います。
これらは紀元前後の歴史時代に入って書かれたものなので、新しい要素もありますが、古くからのシャーマニズム的世界観の要素を抜き出して紹介します。

「プラーナ」の宇宙論は小乗仏教(部派仏教)の「倶舎論」の宇宙論とも似ています。
世界の中心には世界山の「メール山(須弥山)」があります。
メール山の山頂には「ブラフマー神」の城があって、ガンジス川が城を一回りしてから四方の大河に分かれて流れます。

また、その回りに4つの山と樹があります。
その中の「ジャンプ樹」の果汁が川となり生命の水を供給します。
また、4つの湖があって神々の飲み水を提供しています。

天上は何層にも渡る世界があります。
地下には7層の世界があります。
龍神などが住む楽園もありますが、地獄もあって、そこは冥界王の「ヤマ」が司っています。


「ヤマ」はイラン神話の「イマ」に相当する人物で、仏教では「閻魔」になります。
ヒンドゥー教以前の神話では、ヤマは「最初の人間」でした。

ヤマにもシャーマン的な要素が少し見られます。
彼は死後の天国へ行く道を発見して死者を導きました。
そして、死を乗り越えて天の祖先の国の王となりました。

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