三星堆(長江文明)のシャーマン的コスモロジー [シャーマニズム的な神話とコスモロジー]

第5の古代文明と言われる南中国の長江文明は、麦作の4大文明と違って稲作の文明です。長江文明は黄河文明に負けない古さと規模を誇りました。

長江上流の「三星堆」文化は黄河地方の中原からは「屬」の国と呼ばれていました。
屬は殷と敵対し、周と共に殷を滅ぼしましたが、秦によって滅ぼされました。
三星堆文化は宗教的にも中国の文化に大きな影響を与えました。

後の時代に、長江系の文化は黄河系の文化に追いやられましたが、長江系の文化を継承する南中国の人達が弥生文化に大きな影響を与えたのではないかと推測されます。

屬のコスモロジーは考古学的な遺物と後世の南中国地方の神話の断片的な記述によって推測することしかできませんが、シャーマニズムと共通する部分、日本に影響を与えている部分をまとめます。


屬の宇宙像では、世界の中心には世界山の「昆崙山」と、世界柱の「建木」があり、ここから四方に4つの川(これが「四川」地方の由来です)が流れます。 典型的なシャーマニズムの宇宙像です。

「建木」は水に囲まれた九つの丘の近くにあり、2本の幹がねじれ合った縄のような姿をしています。
その頂きには人面鳥身の神人がいます。
この樹は神々やシャーマンが天地を昇降する時に使います。

「昆崙山」の山頂(洞窟)には「西王母」という大女神がいます。
彼女が屬の主神で、実際の国政でもその化身としてのシャーマン的な女王が君臨していました。

西王母は虎の牙と豹の尾を持った半人半獣の姿をしています。
また、西王母は4角の山羊の像を頭につけた杖を持っています。 彼女には、「動物の女主」としての側面があります。

さらに、彼女は、不死をも司りました。
屬には神仙思想の原型があって、西王母は仙人の頭領的存在だったのです。

また、彼女は機織り(養蚕)も司ります。

日本のマテラスオオミカミやシラヤマヒメにも、西王母の面影を見ることができます。


西王母には多くの部下達(眷属)がいます。
不死の霊薬を作る「玉兎」(月で餅をつくうさぎの原型です)と、それを助けるヒキガエル、「九尾狐」(日本にもやってきて、稲荷の白狐にも影響を与えました)、「三青鳥」、などです。

月は「玉兎」とヒキガエルに象徴されます。

一方、太陽は、太陽を運んで飛ぶ三本足の「金烏」(日本では熊野神社やサッカーのナショナル・チームのシンボルで知られます)、あるいは、イヌワシに象徴されます。

昆崙山の西には「湯谷(若水)」という湖(?)があってそこに巨樹の「扶桑(若木)」が生えています。
太陽は10個あり(十干のもとになった考え方です)、毎日一つずつ順に、この樹をつたって昇り、頂きにあるつぼみから生まれ出ます。
そして、太陽は毎日、最後に湯谷に浸かってからこの樹に戻ってそれぞれの枝で休みます。
「扶桑」は太陽樹なのです。

また、それぞれのつぼみの上には烏(イヌワシ)がいて、1羽だけは樹の頂きにとまっています。また、この樹をつたって額から鼻にかけて突き出た角を持った赤い龍が昇降します。
太陽の光は最初に「磐木(桃都樹)」という樹に差します。
そして、その上にとまっている「天鶏(蚊取り線香の金鳥の原型です)」が最初に鳴くと、それに答えて太陽を運ぶ金烏や地上の鶏が鳴きます。
また、この樹の根元には鬼門(冥界への入口)があり、そこには2人の神人がいて鬼(死者)を退治します。 「磐木」は第二の世界樹のような存在です。

地には偉大な祖先神の「燭龍(蚕叢)」がいます。
これは人面龍身で突き出た縦長の目を持つ赤い龍で、2匹の人面龍(息子?)を従えています。
燭龍が目をつむると夜になり、目をあけると昼になるなど、天体や気象を司ります。
燭龍か2匹の龍は、扶桑を昇降する龍かもしれません。

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