チャントと砂絵の儀式 [治療と霊的存在]

ナヴァホ族の儀式は、「詠唱の道」と呼ばれていて、「歌い手(チャンター)」を中心に、数日間に渡って行われます。
「歌い手」は、「メディスンマン」や「シャーマン」に類した存在のようです。

この儀式は、病気を治療するために行われ、「歌(チャント)」と「砂絵(サンド・ペインティング)」と祈りと薬草と供物で構成されています。
ですが、儀式は、必ずしも治療だけが目的というわけではありません。

ナヴァホでは、病気の種類に合わせて、「歌」や「砂絵」が選ばれます。
特定の「歌」、「砂絵」は、特定の神話と関係があります。
「歌」や「砂絵」の種類は、数百以上あります。
そして、病気の症状に関わりのある精霊が強調されます。

「砂絵」は、基本的には、ナヴァホ族の聖なる神霊であるイェイ達を描いたもので、それらは宇宙の諸力を表現し、四方を持っています。

つまり、「砂絵」はインディアンの曼荼羅です。
仏教のマンダラやヒンドゥー教のヤントラはよく知られていますが、インディアンの「砂絵」があまり知られていないのは不思議です。
ちなみに、チベットでも、儀式ごとにマンダラを砂絵で作ります。

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「砂絵」は床に色付きの砂で描かれます。
そして、トウモロコシを振りかけて、精霊達が「砂絵」のある場に招かれます。
また、杖、首飾り、うなり板などの祭具が、「砂絵」の周りの所定の一に置かれます。

病人の体にも、神聖な象徴が描かれます。
そして、病人は、「砂絵」の中に入り、東に向いて座ります。

「歌い手」は、「砂絵」と病人に触れて、一つに結び合わせます。

儀式によって、病気の原因となった悪い力、邪霊は砂に吸い取られ、儀式が終わると「砂絵」は破壊されます。

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「砂絵」に描かれる、力を持つ精霊、英雄は、「聖なる双子」、「異国の神々を殺す者」、「水の子」、「聖なる男」、「聖なる女」、「聖なる少年」、「聖なる少女」などです。

「砂絵」のもとになる神話は、これら「聖なる人物」達が登場する非常に長いものです。

その他に「砂絵」に描かれるのは、ヘビ、バッファローなどの動物、トウモロコシ、タバコなどの植物、太陽、稲妻などの自然現象、弓、矢などの道具です。
これらのものは、そのものの姿と、人格化された姿の2つの相を持っています。


「砂絵」は調和を表現していて、健康とは調和のある状態です。
ですから、治療は、患者に足りない力を招くものです。

この「歌」と「砂絵」の儀式、つまり、ナヴァホ族「詠唱の道」は、シャーマニズムの幾分か体系化された治療法でしょう。
魔術も密教も、基本原理は同じです。

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